「GIGAスクール構想」で1人1台端末が整備されたことで、一気に普及し始めたのが「学習者用デジタル教科書」です。
ここでは、試験で問われるポイントを解説します。
「デジタル教科書」って何?
「デジタル教科書」は、文字通り、紙の教科書をデジタル化して端末で読めるようにしたものです。紙の教科書が文部科学省の検定を受けていることもあり、デジタル教科書も紙の教科書とまったく同じ内容のものとなっています。検定を経ていない動画や音声、ワークドリル、アニメーションなどは、「学習者用デジタル教材」という扱いとなり、これらを端末に入れるかどうかは、費用も考えながら各自治体や学校が判断します。
なお、教員の端末に入っているのが「指導者用」のデジタル教科書、児童生徒の端末に入っているのが「学習者用」のデジタル教科書と呼ばれています。以前は、「指導者用」だけが普及していましたが、「GIGAスクール構想」で児童生徒用端末が整備されたことを契機に、「学習者用」も一気に普及しました。
どんな機能が付いているの?
デジタル教科書には、デジタルの利点を生かした機能が数多く備わっています。教科書本文を読むことに困難のある子どもが音声読み上げ機能を使って聞いたり、視力が弱い子どもが拡大表示をしたり、漢字が苦手な子どもがルビを表示したりできるため、学習上のさまざまな困難を乗り越えやすくなります。こうした拡張機能を使うことで、「学びのユニバーサルデザイン化」を図れる点は、デジタル教科書の大きな利点と言えるでしょう。
どのくらい普及しているの?
今の大学生が小中学生だったころ、まだ「学習者用」のデジタル教科書はほとんど使われていませんでした。1人1台端末が整備されていなかったことを考えれば当然のことです。デジタル教科書といえばもっぱら「指導者用」のことで、各教科書会社も「学習者用」はほとんどリリースしていませんでした。
しかし、「GIGAスクール構想」で1人1台端末が整備されて以降は、状況が一変します。文部科学省の調査によると、2021年3月時点でわずか6.2%だった「学習者用」の整備率が、3年後の2024年3月には88.2%にまで跳ね上がっています。
また、英語については2024年度から、小学校5年生~中学校3年生のすべての児童生徒を対象に、学習者用デジタル教科書が提供されています。右のグラフの最新値は2024年3月のため、2025年3月の整備率は、さらに上がることが見込まれています。
活用すると授業はどう変わるの?
学習者用デジタル教科書を使用することで「学びのユニバーサルデザイン化」が図られるだけでなく、授業そのものの進め方も変わります。「学習者用デジタル教材」が入っている場合、子どもが自らの興味関心に応じて、学びを深めていくことが可能です。また、理解の進んでいる子どもは発展的な学習に着手し、理解が遅れ気味な子どもは自分のペースでじっくりと定着を図ることができます。
紙の教科書では、全員が同じペースで同じ内容を学ぶスタイルでしたが、デジタル教科書を使うことで学びが一人一人の能力・特性に応じた学び、「個別最適化された学び」へと変わるのです。
いずれ紙の教科書はなくなるの?
学習者用デジタル教科書が普及すれば、紙の教科書は不要になるんじゃないかー。この点については、さまざまな意見があります。「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の報告でも、「すべての教科でデジタル教科書を主たる教材に」「紙の教科書とデジタル教科書を併用」「設置者が選択できるように」など、さまざまな例が挙げられています。
完全に切り替わらない背景には、児童生徒への健康面への懸念があり、以前はデジタル教科書の使用は「授業時数の2分の1に満たないこと」が基準として示されていました。しかし、現在はその規制も撤廃され、文部科学省はデジタル教科書の普及に向けてさまざまな事業を展開し、各自治体に整備と活用を促しています。
現状、どんな課題があるの?
学習者用デジタル教科書の普及と活用に際しては、いくつかの課題が挙げられています。「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」が指摘していることを中心に紹介します。
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12月号の誌面では、学習用デジタル教科書について、教科書会社の編集者さんに伺った話や、デジタル教科書を使っての授業リポートや授業者・校長へのインタビューも掲載しています。ぜひお手にとってご覧ください。