特別な支援・配慮が必要な子ども⑦いじめの当事者

いじめ問題は学校教育の普遍的課題です。いじめを受けている子へのケアはもちろん、いじめをしている子への対応も、学校には求められます。

「いじめ」はどのくらい発生しているの?

いじめがどのくらい発生しているのか、正確な統計値はありません。いじめは大人から見えないところで行われているケースもあり、正確な把握が難しいからです。そのため、文部科学省が毎年度公開しているのは学校が確認できた件数、すなわち「認知件数」です。
下のグラフを見て分かるように、いじめの認知件数は年々上昇し続けています。2022年度は68万1948件と、2013年度との比較では実に3.6倍にも上ります。ただ、先述した通りこの数字は認知件数であり、実数ではありません。学校や教育委員会が細かく調査して、より多くのいじめを見つけ出した結果という見方もできます。そのため、面接や論作文では「いじめが増えている」と安易に述べない方がよいでしょう。

何をもって「いじめ」とされるの?

いじめの定義は、いじめ防止対策推進法の第2条に示されています。教員採用試験でもよく問われるので、キーワード(下線部)を押さえておくようにしましょう。

いじめ防止対策推進法とは?
この法律が制定されたのは2013年。前年に滋賀県大津市で起きたいじめ自殺事件が大きく報道され、安倍内閣の下に設置された「教育改革実行会議」が、第一次提言に法制化を盛り込みました。法律には、いじめ防止に向けて国や自治体、学校が取り組むべきことなどが定められています。

「いじめ」への対応はどのような流れで行われるの?

いじめへの対応は、大きく「未然防止」「早期発見」「早期対応」の3段階で行われます。学校と教員に求められる役割については教員採用試験でもよく問われるので、確認していきましょう。

1 未然防止
第一に、学校はいじめの未然防止に向けて「学校いじめ防止基本方針」を定めることが義務付けられています。その方針に基づき、各学級担任はいじめ防止に努めなければなりません。具体例としては、年度当初にいじめを許さない姿勢を明確に示すこと、互いの個性を受容し合えるような学級づくりを進めること、特別の教科・道徳でいじめについて取り上げることなどが挙げられます。

2 早期発見
近年のいじめはネットを介して行われるケースも多く、教員が発見するのが難しい側面があります。しかし、文部科学省の調査では、「学校の教職員等が発見」が最も多くなっており、学校の役割が重要であることが分かります。中でもアンケート調査で発見に至るケースは多く、全体の51.4%にも上ります。
学級担任は、いじめが疑われる状況がないかを日々観察する必要があります。子どもにヒアリングをする際は、報復を恐れて隠したがることが多いことも念頭に置きながら、対応していくことが大切です。

3 早期対応
いじめが発見された際は、被害児童生徒に危害が及ばないように細心の注意を払いながら、対応を進めます。いじめている児童生徒たちへの聞き取りは、教員が手分けをして同じ時間に実施することが推奨されています。その後は、被害・加害保護者に家庭訪問をするなどして状況を伝え、学級の子どもたちにも事実を伝えます。大切なのはその後の再発防止で、子ども同士の関係修復を含め、互いを尊重し合える学級づくりに取り組んでいく必要があります。

面接ではこう問われる!

  • 模範解答例
    まず、いじめは絶対に許さないという姿勢を明確に示します。その上で、互いが尊重し合える学級づくりを進めます。また、日ごろから子どもたちの様子をよく観察し、いじめにつながる言動がないかどうかを確認して、早期発見・早期対応に努めるようにします。

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