今後、学習指導要領の改訂作業はどのようなプロセスを経て進められるのでしょうか。
教員採用試験対策との関連性も含め、解説していきます。
学習指導要領は約10年おきに改訂される
学習指導要領はこれまで、約10年に1回の頻度で改訂されてきました。時代が変化する中で、教育内容も変更・調整していく必要があるからです。
過去の改訂を見ても、各学習指導要領には各時代の背景が色濃く反映されています。例えば、1960年代にソ連が人工衛星の打ち上げを成功させ、アメリカに「スプートニクショック」が起こったことを受け、昭和43~45年改訂では教育内容の現代化や高度化が図られました。また、1970年代は受験戦争による詰め込み教育の弊害が指摘されるようになったことから、昭和52~53年改訂では標準授業時数の削減が図られました。
一方で、いわゆる「ゆとり教育批判」を受けて平成20~21年改訂では授業時数が増えるなど、学習指導要領は幾度もの揺り戻しを経て現在に至っています。
改訂までのスケジュール
学習指導要領の改訂は、下図のようなプロセスで進められます。まず、これからの時代にふさわしい教育内容とは何か、文部科学大臣から中央審議会に「諮問」という形で、審議の依頼が行われます。その後、中央教育審議会では約2年にわたって検討が行われ、途中で「中間まとめ」などを挟みながら、最終的には大臣への「答申」という形で回答がなされます。これを受けて文部科学省が告示として学習指導要領を公示するのです。
その後は、周知のための「移行期間」が設けられ、その間に新しい学習指導要領に沿って教科書の編集や検定、採択などが進められます。そうして告示が出されて約3年後には、全面実施となります。
現行学習指導要領の特色と押さえておきたいキーワード
現行の学習指導要領は、学習の内容(何を学ぶか)だけでなく、方法(どのように学ぶか)、どのような資質・能力を育成するか(何ができるようになるか)までを示している点に大きな特徴があります。「知識・技能」を重視した「コンテンツ・ベース」の教育から、資質・能力を重視した「コンピテンシー・ベース」の教育への転換が目指されているとも言われます。いくつか、押さえておくべきキーワードを解説していきます。
KEYWORD 1 “社会に開かれた教育課程”
現行学習指導要領の最上位目標とも言われるのがこの言葉です。推進のポイントとして「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有すること」「これからの社会を創り出していく子どもたちに必要な資質・能力が何かを明らかにし、それを学校教育で育成すること」「地域と連携・協働しながら目指すべき学校教育を実現」することが示されています。
KEYWORD 2 “資質・能力の3つの柱”
現行学習指導要領が育成を目指す資質として「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」が3つの柱として示されています。各教科の目標も、この3つの柱ごとに示されています。
KEYWORD 3 “カリキュラム・マネジメント”
各学校が子どもや学校、地域の実態を考慮しつつ、自律的に学校を経営していくことを表す言葉です。具体的に、①教育内容を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、②PDCAサイクルを回して教育活動の質的向上を図っていくこと、③そのために必要な人的・物的な体制を確保・改善していくことの3つが示されています。
KEYWORD 4 “主体的・対話的で深い学び”
自らの興味・関心に基づいて自己調整を図りながら学んでいく「主体的な学び」、友人や教職員、地域住民等と対話をしながら学んでいく「対話的な学び」、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら学んでいく「深い学び」の3つを合わせた言葉です。現行学習指導要領では、これら3つの視点から授業改善を図っていくことが求められています。
KEYWORD 5 “探究的な学び”
子どもが自ら問題を発見し、時に周囲の仲間と力を合わせながら、解決していくような学びを指し、 PBL(Project Based Learning)などとも呼ばれています。「総合的な学習の時間」だけでなく各教科でも求められており、高校では「総合的な探究の時間」を含め「古典探究」や「世界史探究」など、「探究」と名のつく科目が数多く設定されています。
KEYWORD 6 “小学校の外国語科”
教科・科目の大きな変更点としては、小学校の5・6年生に「外国語(英語)科」が設けられた点が挙げられます。教科化に伴い、検定教科書も使用されるようになりました。それ以前、5・6年生で実施されていた「外国語活動」は、3・4年生に前倒しされました。
押さえておこう!学習指導要領の頻出ポイント
教員採用試験では、学習指導要領のどこがよく問われるのか。ここでは、小学校学習指導要領の各教科に共通する「総則」や「総合的な学習の時間」の部分(本誌掲載分の一部)から、頻出ポイントをピックアップして解説していきます。
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3月号の誌面では、学習指導要領についての最新動向や押さえるべきキーワードやポイント、過去問や予想問題なども掲載しています。ぜひお手にとってご覧ください。