①2023年4月施行の「こども基本法」が引き続き多くの自治体で出題。2025年実施試験に向けても対策必須。
②2021年6月に「教育職員性暴力等防止法」が成立したことなどを受け近年出題が多く見られる。
③「いじめ」が社会問題化しており、例年出題の多いテーマ。「いじめ防止対策推進法」の対策は欠かせない。
④コンプライアンス重視の時代。教採でも教員の「服務」に関する法規の出題が非常に多い。
ポイント◆1 こども基本法は第3条「基本理念」に出題が集中!
2023年4月に施行されたこども基本法は、2023年実施試験では13自治体で出題されましたが、2024年実施試験ではほぼ倍増。22自治体で出題され、文字通り“トレンド入り”しました。
全20条、附則2条からなるこども基本法の出題は、第3条のこども施策の「基本理念」に集中していますが、今後は政府に「こども施策に関する大綱(こども大綱)」の策定義務を課している第9条、都道府県に「こども施策についての計画(都道府県こども計画)」の策定の努力義務を課している第10条、こども施策に対するこども等の意見を反映させることを明記した第11条などに出題がシフトしていくことが予想されます。必ず目を通しておきましょう。
併せて、児童虐待の防止等に関する法律、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(2022年4月施行)、こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律(2024年6月改正)など、児童生徒の保護に関する法律についてもチェックしておきましょう。
ポイント◆2 教職員の「服務」「研修」は“不易”の出題!
教職員の服務の根本基準について定めた地方公務員法第30条、地方公務員の職務上の義務や身分上の義務について定めた地方公務員法第31条~第38条、教育公務員の研修について定めた教育公務員特例法第21条~第25条の2 は、最も出題率の高い条文です。
どこを空欄にされても答えることができるよう、条文に記載されているキーワードは正確に暗記するようにしましょう。
ポイント◆3 条文の丸暗記だけでは対応できない出題に注意!
教育法規には①空欄補充問題、②正誤判定問題、③出典法規を問われる問題、④事例で問われる問題―と、4つの出題形式があります。
キーワードさえ暗記すれば正答できる①に比べ、②は、その条文の「どこが間違っているか」を素早く見つけ出す必要があります。③は、常に条文の出典法規を意識しながら勉強しなければなりません。最も手ごわいのが④のタイプ。教職員の服務や著作権法などについて、「次のような行為は法令に照らして適切かどうか」を判定する問題で、法令に対応したガイドラインや文部科学省通知なども読んでおく必要があります。受験する自治体の出題形式を必ずチェックしておきましょう。
※「出るとこグラフ」と「出題頻度表」は、ただいま発売中の『教員養成セミナー』2月号に掲載しています。
Challenge! 2024年実施試験|教育法規
(※本誌掲載の問題より一部を抜粋。また、掲載の都合上問題の一部を改めている箇所がある)
【こども基本法/教育時事含む】
問題1. 2023年4月に発足したこども家庭庁に関して、次の各問いに答えよ。(茨城県)
Ⅰ 次の各問いに答えよ。
⑴ 次の文は、こども家庭庁の行政機関における組織の位置付けについて説明したものである。( )に入る適語を選べ。
こども家庭庁は、総理大臣直属の機関として( )の外局に位置付けられている。
①内閣府 ②総務省 ③財務省 ④文部科学省 ⑤厚生労働省
⑵ 次の文は、こども家庭庁が、2023年12月22日に示した「こどもの居場所づくりに関する指針」の第4章 こどもの居場所づくりに関係する者の責務、役割の一部を抜粋したものである。( )に入る適語を選べ。
学校は、教育機関としての役割のみならず、こどもの( )になるなど居場所としての役割も担っており、その認識を深めていくことが重要である。そうした認識の下、学校・家庭・地域が連携・協働することにより、地域社会との様々な関わりを通じてこどもが安心して活動できる居場所づくりを推進する。
①コミュニティ ②ニーズ ③ウェルビーイング ④セーフティネット ⑤ライフステージ
Ⅱ こども基本法の概要では、6つの基本理念が示されている。次の各文は、その一部を抜粋したものである。( )に入る適語を選べ。
⑴ 全てのこどもについて、( a )として尊重されること・基本的人権が保障されること・差別的取扱いを受けることがないようにすること
a ①人間 ②未成年 ③国民 ④人格 ⑤個人
⑵ 全てのこどもについて、適切に養育されること・生活を保障されること・愛され保護されること等の( b )に係る権利が等しく保障されるとともに、( c )の精神にのっとり教育を受ける権利が等しく与えられること
b ①厚生 ②幸福 ③福祉 ④恵沢 ⑤恩恵
c ①児童憲章 ②日本国憲法 ③児童権利宣言 ④学校教育法 ⑤教育基本法
⑶ 全てのこどもについて、年齢及び発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して( d )を表明する機会・多様な( e )する機会が確保されること
d ①意見 ②自由 ③主義・主張 ④思想・良心 ⑤不服
e ①政治活動に参加 ②問題に関して自己決定 ③意思を表示 ④社会的活動に参画 ⑤生活環境を選択
⑷ こどもの養育は( f )を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、十分な養育の支援・での養育が困難なこどもの養育環境の確保
f ①地域 ②世帯 ③関係機関 ④家庭 ⑤家族
【地方公務員法】
問題2.次は、地方公務員法の条文または条文の一部である。下線部が誤っているものを選べ。(滋賀県)
⑴ 第29条 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
⑵ 第30条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
⑶ 第33条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
⑷ 第35条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力の一部をその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
⑸ 第36条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
【体罰など事例で問われる法規】
問題3.教員が児童生徒に体罰を加えることは、法律で禁止されている。また、指導と称した教員の行き過ぎた行為は、児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え、教員等及び学校への信用を失墜させる行為であり、許されるものではない。次の各文には、教諭の不適切な行為が含まれているものがある。不適切な行為が含まれているものをすべて挙げたときの組み合わせを選べ。(大阪府・豊能地区・大阪市・堺市)
⑴ A教諭は、小学校で学級担任をしており、児童の学習意欲や学習習慣を高める目的で毎日宿題を出していた。ところが、クラスの中で児童Eだけが毎回宿題を提出しないため、A教諭は給食の時間の開始時に児童Eを別室に呼び出し、事情を聴いた。A教諭が児童Eへの指導を終えたのは、午後の授業が始まる直前であったため、児童Eは給食を食べることができずに午後の授業を受け、そのまま帰宅した。
⑵ B教諭は、自らが顧問をしている部活動の練習中に、部員Fを呼び寄せて厳しく指導し、気持ちを奮い立たせるために、部員Fの背中を平手で強く叩き、練習に戻した。Fを含む部員たちは、その行為を「気合いを入れてもらうための行為」として肯定的に受け止めており、B教諭は保護者からも「子どもたちを厳しく指導してください。」と言われていた。
⑶ C教諭は、授業中に生徒Gが私的にスマートフォンを使用しているところを見つけたため、スマートフォンを渡すよう求めたが、生徒Gはその指示に従わなかった。そのため、C教諭は、生徒Gの手を強くひねってスマートフォンを取り上げた。なお、C教諭の学校の校則では、授業中に私的な目的でスマートフォンを使用することが禁止されており、教員がその行為を確認した場合は、学校が預かり保護者に返却することになっていた。
⑷ D教諭は、生徒指導の担当として昼休みに校内を巡回した際、生徒Hが生徒I に一方的に暴力を振るっている場面に出くわした。D教諭は、生徒Hに対して、制止しながらやめるよう声をかけたが、言うことを聞かなかったため、生徒Iの身に危険が及ぶと判断し、生徒Hの両肩をつかんで2人を引き離した。
①-⑴、⑵、⑷
②-⑵、⑶、⑷
③-⑴、⑵、⑶
④-⑴、⑶、⑷
⑤-⑴、⑵、⑶、⑷
(解答・解説)
問題1.Ⅰ ⑴-① ⑵-④ Ⅱ ⑴a-⑤ ⑵b-③ c-⑤ ⑶d-① e-④ ⑷f-④
➡Ⅱ:こども基本法第3条「基本理念」の規定。
問題2.⑷
➡⑷「一部」ではなく「すべて」。
問題3.③
➡学校教育法第11条「児童生徒の懲戒」の規定、及び文部科学省「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」(2013年3月13日)の別紙「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」及び大阪市教育委員会「教育公務員の服務規律について」の「3.体罰について」を参照。
⑴「別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない」ことは体罰に当たると解される。
⑵「背中を平手で叩く」ことは身体に対する侵害と解され、体罰に当たると解される。
⑶「手を強くひねる」ことは身体に対する侵害と解され、体罰に当たると解される。
⑷他の児童生徒に被害を及ぼすような暴力行為に対して、これを制止したり、目前の危険を回避するためにやむを得ずした有形力の行使は、正当な行為と解される。
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