「子どもの貧困」という言葉を耳にしたことのある人も多いことでしょう。
学校において貧困家庭の子どもへの支援は、重要な課題の一つとなっています。
「貧困家庭の子」って、どのくらいいるの?
「貧困」の定義はさまざまですが、その一つに「相対的貧困」があります。「等価可処分所得(世帯の構成員の生活水準を表すように調整された所得)」の中央値の半分を「貧困線」と言い、これに満たない世帯のことを指します。2021年度の相対的貧困率は15.4%に上ります。また、相対的貧困世帯の子ども(17歳以下の者)の割合、すなわち「子どもの貧困率」は11.5%となっています。
下のグラフは、相対的貧困率と子どもの貧困率の推移を表したものです。日本ではバブル期だった1985年以降、上昇し続けましたが、ここ数年はさまざまな対策が取られたこともあって、少し改善傾向にあります。とはいえ、約8人に1人の子どもが貧困状態にあることに変わりはなく、学校としても支援をしていくことが求められます。
「子どもの貧困」は、どんな影響があるの?
貧困状態にある子どもには、さまざまな影響が及びます。十分な食事が摂れず、栄養不足の状態になるほか、居住環境によっては保健衛生面の問題が生じることもあります。
教育面では、経済的な事情から進学を断念することにもつながります。実際、家計を支えるために高校や大学への進学を諦めて就職する中高生は少なくありません。さらには、博物館や美術館、体験イベントなどに行く機会も少なく、それがその子の心身の成長に影響する側面もあります。
「貧困の連鎖」って、どのように起こるの?
先に述べたように、貧困家庭の子どもは経済的な事情で進学を断念せざるを得ないことがあります。それだけでなく、他の子どもに比べて塾などで学ぶことも難しく、必然的に進学や就職も不利になる傾向があります。その結果として十分な収入が確保できなければ、自身も貧困状態に陥ることになります。逆に言えば、家庭に経済力があれば塾などにも十分に通えて、進学や就職も有利になり、結果、経済的にも恵まれた生活を送ることができる状況があります。
こうして貧困家庭の子どもが自身も貧困になることを「貧困の連鎖」と言い、これをいかに解消していくかは、公教育の大きな課題となっています。
「貧困家庭の子」には,どんな支援が行われているの?
「貧困の連鎖」を生まないために、国は「四つの柱」(右図)を立てて、さまざまな対策を講じています。ここでは、「教育の支援」を中心に、具体的に実施されている施策の概要を解説します。
幼児教育・保育の無償化
3~5歳の子については、2019年10月から幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が無料になりました。ただし、通園送迎費、食材料費、行事費などは保護者負担となります。0~2歳の子については、世帯の所得等によって無料になります。
学校給食の無償化
貧困家庭にとっては負担が大きく、未払いなどの問題も起きていた給食費を無償化する自治体が増えています。2023(令和5)年度時点で1794自治体中722自治体が、自主財源等から給食費を拠出し、無償化を実現しています。
こども食堂
「こども食堂」は、栄養が十分に摂れていない子どもが低料金・無料で食事を食べられる場所として、東京都大田区で始まった取り組みです。現在は「こども食堂ネットワーク」という連絡会もつくられ、全国に広がっています。
SCとSSWの配置
貧困家庭の子どもは人とのつながりが少なく、社会的に孤立しがちです。そうした状況を踏まえ、学校にスクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)を配置するなどして、相談体制の強化を図っています。
学習支援
約半数の自治体で、貧困家庭の子どもを対象に学習支援や居場所づくり、生活習慣・育成環境の改善に関する助言などが行われています。また、一部では放課後などに地域の児童館や公民館で、学習支援を行う取り組みも行われています。
生活保護世帯への教育扶助
生活保護受給世帯には、教育面においても学用品や通学用品、給食費、オンライン学習に必要な通信料などの補助が行われています。
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