解説!「働き方改革」とは?①

学校で進められている「働き方改革」とは、どのようなものなのでしょうか。教員志望者として知っておくべき基本情報を解説していきます。

1・日本の学校教員の労働状況は今、どうなっているの?

教員志望者の人であれば知っているとは思いますが、日本の学校教員は非常に多忙で、時間外労働が多い状況にあります。その改善を目指して「働き方改革」が進められていますが、状況的に改善している部分もあれば、改善していない部分もあります。ここでは、文部科学省が実施している「教員勤務実態調査」の2016年度2022年度のデータをもとに、現況を解説します。

2・世界的に見て、日本の教員の労働環境は悪いの?

日本の教員の労働時間は、世界的に見ても突出して長いことが、「TALIS(OECD国際教員指導環境調査)※注」と呼ばれる国際調査から明らかになっています。教員が忙しいのは「職業上の特性だから仕方がない」と言う人もいますが、国際的な調査データからは、改善の余地が大きいことが分かります。
※TALIS=Teaching and Learning International Survey. 学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた、OECDの国際調査。

したいけどできない「職能開発」のジレンマ

「職能開発」とは、教員の技能向上に向けた取り組みのことで、研修会や勉強会に参加したり、専門書を読んだりするようなことを指します。「TALIS」の調査結果を見ると、日本の教員は世界的に見て、そうした時間が取れていない状況にあります。教育基本法第9条には「絶えず研究と修養に励み」という文言がありますが、現実的にはそのための時間が取れない状況があるのです。

3・過重労働によって、どんな問題が生じているの?

過重労働によって、実に多くの問題が直接的・間接的に生じています。ここでは、大きく2つの問題を取り上げて解説します。

生じている問題① 精神疾患による病休の増加
文部科学省の調査によると、2022年度の精神疾患による病気休職は6,539人に上り、過去最多を記録しました。全教育職員数に占める割合で見ると0.71%にすぎませんが、この数字は病気によって「休職」をしている人の割合であり、その手前の「病気休暇」を取得している人は含まれていません。そのため、実質的にはもっと多くの教員が精神疾患で休んでいるものと推察されます。当たり前ですが、誰かが休めば、必然的に他の教職員への負荷は大きくなります。そのため、学校によっては負の連鎖によって、複数の教員が病気休暇・休職に追い込まれているところもあります。

生じている問題② 教員志望者の減少と教員不足
昨今では新聞やテレビ、SNSでも学校教員の忙しさが盛んに発信されるようになりました。その結果、「教職はブラック」だというイメージが世間的にも広がり、それが教員志望者の減少につながっているとの指摘がなされています。実際、教員採用試験の受験者数は年々減少を続けており、2023年度(2022年実施)採用者の競争率(採用倍率)は3.4倍と、過去最低を記録しました。ただし、これは全校種・教科の平均値であり、校種や教科によってはいまだ高倍率な状況であることに注意が必要です。
受験者の減少により、不合格になって非正規教員として働く人も減少しています。それが結果として教員不足の問題、すなわち「欠員が埋まらず、授業が実施できない」状況を生んでいることも看過できない問題と言えます。

【②へつづく】


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