家族の介護や看病、家事などをしている子どものことを「ヤングケアラー」と言い、近年はそうした子どもへの支援も学校教育の課題の一つとなっています。
改めて「ヤングケアラー」って何?
定義はさまざまですが、日本ケアラー連盟は「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子どものこと」と定義しています。実際に、ヤングケアラーが担っているサポートはさまざまです。
「ヤングケアラー」って、どのくらいいるの?
ヤングケアラーがいる学校がどのくらいあるのか、その割合を調べたデータがあります(下図)。ヤングケアラーが「いる」と回答した中学校は46.6%、全日制高校は49.8%に上ります。一方、定時制高校は70.4%、通信制高校は60.0%に上り、このデータからヤングケアラーが全日制高校への進学を断念し、定時制高校や通信制高校に通いながら家族のケアをしている可能性を読み取ることができます。
「ヤングケアラー」の支援は、どのように行われるの?
ヤングケアラーは、本人にその自覚がないことも多く、発見しにくい側面があります。さまざまな手を駆使して早期発見に努め、支援を実施していくことが求められています。
1 早期発見・把握
学校教員がヤングケアラーに気付くためには、日ごろから一人一人の様子をよく観察し、「変化」に気付く必要があります。例えば、今まで規則正しい学校生活を送っていた子が急に遅刻・欠席を繰り返すようになったというような場合、子どもが発しているサインである可能性があります。その子らしくない行動が増えたり、本来の力が急に発揮できなくなったりした場合は、注意が必要です。
2 支援の必要性の判断
「ヤングケアラーかも……」と思って本人にそれとなく聞いてみても「大丈夫です」との返事が返ってくることは珍しくありません。面談は、その子が話したくなるタイミングを待ちながら、「どの教員や支援者なら話しやすいか」「どんなシチュエーションなら話しやすいか」を考えた上で進めることが大切です。また、ヤングケアラーによって切迫状況には差があるので、緊急度の高いものを見極めて対応していくことも大切です。
3 支援の実施
ヤングケアラーへの支援は、基本的に福祉関係機関や地域の民間団体が主体となって進められます。学校は本人の意向を確認した上で、管理職や学年の教員、スクールソーシャルワーカーなどとも相談をしながら、外部機関へスムーズにつなぐ役割が求められています。また、地域からの呼びかけがあれば、学校の代表者が支援検討の会議などにも参加します。
支援が始まった後は、いつも通り接することが大切です。温かく見守り、話を聞いてほしいそぶりなどが見られた場合は面談の場を持つなどして状況をモニタリングします。
また、何かしらの変化があった場合は、スムーズに外部とも情報共有を図りながら、対応していくことが求められます。
Column|社会的認知度の向上に向けて
ヤングケアラーの問題が大きくクローズアップされるようになったのは、ここ数年のことです。それ以前も、家族のケアなどをしている子どもはいましたが、本人はそれが当たり前と考え、誰にも相談しないような状況がありました。その結果、多くの人が問題に気付かなかったのです。その意味で、ヤングケアラーという存在の社会的認知度を向上させることが重要になってきます。こうした状況を受け、厚生労働省では2022年度から2024年度をヤングケアラー認知度向上の「集中取組期間」とし、広報・啓発活動を行っています。
もっと詳しく知りたい方は『月刊教員養成セミナー』2024年11月号をcheck✔
11月号の誌面では、特別な支援や配慮を必要としている子どもへの支援策に関連する法令や答申などを詳しく解説しているほか、実際に全国で出題された問題や、面接での質問例や模範解答なども掲載しています。ぜひお手にとってご覧ください。