壮大な未来予想図を描く「教育データ利活用」

教育データを上手に利活用すれば、子どもたちの学びは充実し、授業改善が図れると言われています。
具体的にどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。

「教育データ」には、どんなものがあるの?

子どもたちが端末を使って学習活動を行えば、その履歴がデータとして残ります。これらのデータをうまく活用することで、子どもたちの学びが充実し、教員の指導の改善を図ることができると言われています。
そのために文部科学省では「教育データの標準化」を行い、情報の分類整理を行っています。具体的に、児童生徒や教職員、学校などの「主体情報」、学習分野などの「内容情報」、子どもの学習や教員の指導などの「活動情報」の3つに分類しています。これら3つの教育データを蓄積し、関連付けながら分析・解析して学校教育に生かすことが目指されているのです。

「学習指導要領コード」って何?

児童生徒が、デジタル教科書を使って1次関数を学び、その後に市販のドリルを使って復習したとします。すると教育データとして、児童生徒の氏名という「主体情報」、1次関数という「内容情報」、学習と復習という「活動情報」がデータとして残ります。ただ、それだけではデジタル教科書と市販ドリルで同じ「1次関数」を学んだことが紐づけられず、分析するためのデータとして十分とは言えません。そのため、文部科学省は「学習指導要領コード」を設定・公表しています。例えば、中学校・数学の1次関数(について理解すること)には、「8350223311100000」というコードが振られており、各教科書や教材にこのコードが付されることで、児童生徒一人一人の1次関数の学習量などが可視化されるのです。

「教育データの利活用」で、何がどう変わるの?

私たちがパソコンやスマホで買い物をすれば、その履歴はメーカーやECサイト等に蓄積されます。そして、メーカーは蓄積された膨大なデータを分析し、新商品の開発に役立てたり生産計画を立てたりマーケティング戦略を練ったりしています。いわゆる「ビッグデータ」の活用です。
教育分野においても、さまざまな教育データを蓄積・分析・活用することを目指して、2022年1月に国が「教育データ利活用ロードマップ」を策定しました。ここには、教育データの蓄積・流通に関する将来的なイメージなどが示されています。具体的に、膨大な学習履歴などから一人一人の子どもが自分に合った教材・方法で学んだり、教員が授業改善に生かしたり、国や自治体が教育施策の立案に生かしたりといったことが想定されています。

データを収集すること自体に、問題はないの?

「教育データ利活用ロードマップ」が公表されたとき、一部の報道機関が「国が教育データをデジタル化して一元化する」と報じたことで、SNS上では批判が飛び交い、政府がその対応に追われる事態が発生しました。確かに、すべての国民の学習履歴を国が一元的に管理すると言われれば、どこか抵抗感のある人もいることでしょう。しかし、実際には国が一元管理するようなことは想定しておらず、データは学校や自治体、事業者などが主体ごとに「分散管理」する方針が、「教育データ利活用ロードマップ」には示されています。そして、それぞれの教育データは個人情報保護法等に則って、適正に管理・運用されます。


もっと詳しく知りたい方は『月刊教員養成セミナー』2024年12月号をcheck✔

12月号の誌面では、教育のデジタル化(教育DX)のリアルな現状を詳細にお伝えするとともに、筆記試験や面接試験、論作文などで問われるポイントを解説しています。ぜひお手にとってご覧ください。