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キミの願いが実現できる!学級経営ちょこっとスキル⑤

現役小学校教師の髙橋先生が、子どもたちへの“願い”を込めて編み出した学級経営の「ちょこっとスキル」。これを参考にすればあなたもみんなが居心地良く成長できる学級をつくれます! 隔週金曜日に更新します。


第5回 心は言葉で変わる『気持ちを前向きにする言葉』

◎いつも振り返られる場所に掲示します
◎教師から掲示した言葉を積極的に使います

こんなときに使う!

 学習や行事など、何かやることを提案します。その時に、「えー!」「だるっ」「めんどくさ」などの後ろ向きな発言が飛び交うことがあります。それは、児童が後ろ向きな言葉しか知らないからです。日常から前向きな言葉を教えて使わせ、言葉の力で気持ちを前向きにしていきましょう。

こうやって使う!

STEP1 『今使っている言葉』について話し合う
 「えー!」「だるっ」「めんどくさ」などの言葉は、何気なく使ってしまいます。だからこそ自分達が何気なく使っている言葉に意識を向けさせなければいけません。意識を向けさせた後は、その言葉がどれだけ自分の気持ちを後ろ向きにしているか、友達の気持ちを後ろに引っ張っているかを気づかせます。

STEP2 『気持ちを前向きにする言葉』を教える
 子ども達は気持ちを前向きにする言葉をほとんど知りません。そこで、「えー!」「だるっ」「めんどくさ」と、言いそうになったときに、代わりに言う言葉を教えます。その言葉は、「よし! やるぞ!」です。形だけでもこの言葉を言うことによって、気持ちが前向きになることを体験させます。

STEP3 掲示物を意識して日常から使う
 ネガティブな言葉を排除し、「よし、やるぞ」と、気持ちを前向きにする言葉の推進を呼びかけるポスターをつくります。中学年以上なら、子どもにつくってもらうと効果的です。そのポスターを掲示して、まずは教師が「気持ちを前向きにする言葉」を進んで使いましょう。その態度が子どもによい影響を与えます。

スキルに込めた願い

言葉の力で気持ちを前向きにしてほしい

人は使う言葉で思考する

 「テスト勉強面倒くさい」と思っていると、本当にテスト勉強が面倒くさくなります。「あの人のことが苦手」と思っていると、本当にあの人のことが苦手になります。そして、「自分のことが嫌い」と思っていると、本当に自分のことが嫌いになります。
 後ろ向きな気持ちだから、後ろ向きな言葉が出てしまうのでしょうか? いいえ、逆です。後ろ向きな言葉を使うから、後ろ向きな気持ちになってしまうのです。試しに、「よし、やるぞ!」とたくさん呟いてみてください。気持ちが前向きになるはずです。
 人は使う言葉で思考します。子どもの使う言葉を前向きにすることによって、気持ちを前向きにさせることができます。

後ろ向きな情報に敏感なのは本能

 では一体、なぜ後ろ向きな言葉を使ってしまうのでしょうか? それは、人は本能的に「後ろ向きな情報をもとに命を守っているから」です。人は、危険に近づかないために、後ろ向きな情報に対して敏感なのです。
 だからこそ、意識して前向きな情報にフォーカスしなければいけません。同じように気持ちが前向きになる言葉も意識して使わないと、使えるようにならないのです。
 「よし、やるぞ」そんな言葉を当たり前のように使える環境づくりをしていくことも、教師の大切な役割のうちの1つです。この環境をつくることで、子どもの意欲は大きく変わります。
 そのために私は、私自身が前向きな言葉を使うクセを付けるように意識しています。何かあったとき
に、後ろ向きな言葉を使いたい気持ちをグッと抑え、無理やりにでも前向きな言葉を使うようにしています。
 そして、その言葉の力を使って、自分自身の気持ちも前向きにしています。すると、子どもも教師につられて、前向きな言葉を使う瞬間があります。その瞬間を逃さず、「うれしいなあ。その言葉のおかげで先生も前向きになったよ。ありがとう」と、メッセージを伝えます。このようにして前向きな言葉を使う文化をつくっていきます。

みなさんは普段、どんな言葉を使っていますか?
 私自身、気をつけなければすぐに後ろ向きな言葉を使うタイプです。自分のことを責めすぎて、自己嫌悪に陥るタイプです。だからこそ、使う言葉を前向きにするように意識しています。
 たとえば、学級経営がうまくいかないときは、すぐに自分を責めすぎたり、 子どもや周りの先生、環境のせいにしたりしてしまいます。しかし、そんなときだからこそ、「よし、やるぞ」と自分に言い聞かせて前向きな気持ちで取り組めるように自分に言い聞かせます。すると、不思議と気持ちが前向きになり、前に進むことができるのです。
 子どもを前向きな気持ちにするために、まずは大人から。そんなことに教師になってから気づくことができました。
 「気持ちを前向きにする言葉」、これは子ども達だけでなく、私たち大人にもおすすめのちょこっとスキルです。


著 髙橋朋彦
1983年千葉県生まれ。千葉県小学校勤務。2019年「実践!私の教育記録」(日本児童教育振興財団主催)特別賞受賞。『ちょこっとスキル』シリーズ(共著、明治図書)『明日からできる速攻マンガ4年生の学級づくり』(日本標準)「教育サークル スイッチオン」「バラスーシ研究会」「日本学級経営学会」などに所属。算数と学級経営を中心に学んでいる。