現役小学校教師の髙橋先生が、子どもたちへの“願い”を込めて編み出した学級経営の「ちょこっとスキル」。これを参考にすればあなたもみんなが居心地良く成長できる学級をつくれます! 隔週金曜日に更新します。
第8回 自治的活動につながる『給食づくりの作戦会議』
こんなときに使う!
「給食づくり(配膳のことです)」はやりたくないと感じる子が多く、「やらせなければいけないこと」と捉えていると指導は難しいものです。給食づくりを「子どもを成長させるチャンス」と捉えることで自治的活動にすることができます。ただの給食づくりが効果の大きい教育活動へと変わります。
こうやって使う!
STEP1 給食をつくる目標の時間を設定する
多くの場合、目標の時間が設定されていないので、つくる時間がダラダラと長引いてしまいます。そこで、給食をつくる時間を設定します。時間は10分がいいと思います。オススメの提示の仕方は、「ねぇ知ってる? 一流の学級は10分で給食をつくれるらしいよ?」と言って、今の自分達と比較させます。
STEP2 作戦会議をする
子ども達が今の自分達の状態に気づいたら、「どうしたら10分でつくれるか、作戦会議しよう」と投げかけます。最初は当番側の作戦が出てきます。しかし、10分ではつくれません。そのときは「当番以外も作戦をつくるといいよ」と助言して次回にのぞませます。時間が短くなる過程を教師は喜びます。
STEP3 定期的に作戦会議をする
子ども達にとって作戦会議は新鮮で、すぐに10分でつくれるようになるでしょう。しかし、それと同じくらい、すぐに飽きて10分でつくれなくなります。ですので、定期的に給食をつくる作戦会議をすることが大切です。根気は要りますが、このような積み重ねが自治的集団づくりには欠かせません。
スキルに込めた願い
給食づくりを通して成長してほしい
給食づくりも自治的集団づくりにつながる活動
「給食指導」は大学では教えてくれない教育活動の1つです。私は若手の頃、給食づくりに参加しない児童に「きちんと給食をつくりなさい!」と言うだけで、 うまく指導することができませんでした。そんな中、奈良県の小学校教師である土作彰先生の給食づくりの実践を見て衝撃を受けました。具体的な目標時間を与え、手立てを子ども達と共有することで手際良く丁寧に給食づくりをしていたのです。この土作先生の実践を参考に、自分だったらどのようにしたらよいか考え、自治的活動につながる給食づくりに発展させました。
給食づくりの作戦会議の仕方
① 給食をつくる時間を計る
「時間がかかっているなぁ」と思いつつも、実際にかかっている時間が何分か子どもも教師も分かっていません。そこで、ストップウォッチを使ってさりげなく計測しておきます。学級の人数にもよりますが、30分近くかかっていることもあります。
② 作戦会議をしかける
時間は、4時間目の終わり近くがいいでしょう。
「みんなさ、給食をつくる時間が何分かかっているか知ってる? 25分なんだよね。これだと、食べる時間が10分しかないんだ。大変じゃない?」
うなづく子ども達。
「ねぇ知ってる? 一流の学級は10 分で給食をつくれるらしいよ?」
「給食を10分でつくるチャレンジしてみない?」
③ 作戦会議をさせる
「今から作戦会議をするよ。どうしたら早く作れるかアイディアちょうだい」
・給食当番が早く手を洗う
・給食当番が早くエプロンに着替える
・給食当番が早く配膳台の用意をする
など、給食当番側のアイディアが出ます。このとき、教師はアドバイスをしません。
④ 作戦を実行させる
給食づくりをします。いつもより手際よくつくっていますが、10分を切ることはできません。しかし、
「15分! すごいじゃん! 昨日よりもかなり早くなったね! 先生は嬉しいです!」
と、喜びます。
⑤ 再度作戦会議
「でも10分は切れないね……。どうしたらいいかな?」
経験上、当番に関するアイディア以外はなかなか出てこないと感じます。そんなときは
「じゃぁヒントね。給食当番以外の人たちの作戦も考えるといいんじゃない?」
と言ってアイディアを出させます。アイディアを出させながら、写真のような板書をします。そしてタイムを計ると、また時間が短くなります。そしたらまた、喜びましょう。この繰り返しです。
積み重ねが大事
このような取り組みに、すぐに結果を求めると、教師はイライラするばかりです。成長を長い目で見守り、昨日より少しでもよい結果であれば子どもと一緒に喜び、そうでなければ子どもと一緒に繰り返し、子どもと一緒に取り組んでいくことが大切です。
著 髙橋朋彦
1983年千葉県生まれ。千葉県小学校勤務。2019年「実践!私の教育記録」(日本児童教育振興財団主催)特別賞受賞。『ちょこっとスキル』シリーズ(共著、明治図書)『明日からできる速攻マンガ4年生の学級づくり』(日本標準)「教育サークル スイッチオン」「バラスーシ研究会」「日本学級経営学会」などに所属。算数と学級経営を中心に学んでいる。