現役小学校教師の髙橋先生が、子どもたちへの“願い”を込めて編み出した学級経営の「ちょこっとスキル」。これを参考にすればあなたもみんなが居心地良く成長できる学級をつくれます! 隔週金曜日に更新します。
第2回 自分で自分の力を高める『学びの5ステップ』
こんなときに使う!
「勉強が分からないから教えて」と聞かれたので、個別に教えます。学習内容が理解できて子どもはうれしそう。しかし、しばらくするとその子が別の問題を教えてもらいにやってきました。聞くことはいいことですが、子どもには、勉強だけでなく“自分で”学習する「学び方」も身につけさせることも大切です。
こうやって使う!
STEP1 学びの5ステップの掲示物をつくる
①問題を解く
②丸つけ(間違い探し)をする
③間違い直し(分析)をする
④何も見ないで間違えた問題を解く(2回目)
⑤できるまで①~④を繰り返す
いつでも確認できるよう、掲示物をつくります。
STEP2 学びの5ステップの使い方を確認する
学びの5ステップを見せながら今までの問題の取り組み方を確認します。すると、①~②までの子がほとんどです。しかし、そこまでのステップではできたことにはなりません。④の「何も見ないで間違えた問が解ける」ができて、初めて力になるということを子どもと一緒に確認します。
STEP3 授業中に学びの5ステップの練習をする
学びの5ステップを教えたら、すぐに計算ドリルを使って取り組ませます。実際に手を動かすことで初めてできるようになるのです。計算ドリルを途中まで解かせて残りを宿題にすると、家庭でも自分で学びの5ステップに取り組めます。定期的に、授業中に練習させて積み重ねることで定着していきます。
スキルに込めた願い
自分で自分の力を高められるようになって欲しい
『学び』と『学び方』
「分かりやすい授業をしたい!」
私たち教師は誰でもそんな願いをもっています。しかし、授業で教えられるのはほとんど「学び」そのものです。それでは、子どもは授業中しか力をつけることができません。
学校教育から離れたときのためにも、学びそのものだけでなく、自分で自分の力を高める「学び方」を教えることもとても大切です。
スキルの誕生
私が大学生の頃、線形代数の問題に苦戦しました。数学が得意な友達に問題の解き方を聞くと、
「解き方を聞いてもできるようにならないよ」
と言われました。
「じゃあどうすればいいの?」
と聞くと、
「答えを確認しながら、見ないでできるようになるまで何度も練習するんだよ。ほら」
と言われ、同じ問題を何度も解いた山積みのコピー用紙を見せられました。私には、自分で学習する力と学習量が足りなかったのです。友達の方法を真似すると、時間はかかりましたが自分の力で難しい問題を解けるようになりました。
学びの5ステップは、この経験を小学生でもできるように具体化した実践です。
学びの5ステップと合わせた具体的な声かけ
私は『学びの5ステップ』をより効果的にするために、次のように声をかけて指導をしています。
①「学び」と「学び方」のちがい
「もし、無人島に行ったら食べ物の確保に困るよね。みんなは魚が欲しい? それとも、魚の捕り方を知りたい?」「魚の捕り方を知っていれば、魚がなくなっても、自分の力で食べ物を確保できるようになるよね」「勉強もそれと同じで、自分で学ぶ力も大切なんだ」
②学びの5ステップを体験させる
計算ドリルで比較的簡単な未習のページを選び,
「この問題を学びの5ステップで解いてごらん」
「きっと、自分の力だけでできるようになるよ」
と言い、取り組ませます。
すると、初めて出会った問題にもかかわらず、自分の力だけで解けるようになる子どもがほとんどです(※)。学びの5ステップのよさを体験させることができます。そして、
「宿題もこの方法でやってみようね」
と、5ステップで取り組ませます。
(※できない子どもも数人います。その子どもには他の合った方法を提案することをおすすめします。)
学びの5ステップをより効果的にする方法
子どもに「学び方」を教え、自分の力でできるようになる成功体験を積み重ねることが大切です。成功体験が積み重なると、心が前向きになり、自分の力を高めるために問題に取り組めるようになります。次回ご紹介する方法と合わせることで、さらに意欲的に取り組めるようになります。楽しみにお待ちください。
著 髙橋朋彦
1983年千葉県生まれ。千葉県小学校勤務。2019年「実践!私の教育記録」(日本児童教育振興財団主催)特別賞受賞。『ちょこっとスキル』シリーズ(共著、明治図書)『明日からできる速攻マンガ4年生の学級づくり』(日本標準)「教育サークル スイッチオン」「バラスーシ研究会」「日本学級経営学会」などに所属。算数と学級経営を中心に学んでいる。