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キミの願いが実現できる!学級経営ちょこっとスキル⑫

現役小学校教師の髙橋先生が、子どもたちへの“願い”を込めて編み出した学級経営の「ちょこっとスキル」。これを参考にすればあなたもみんなが居心地良く成長できる学級をつくれます! 隔週金曜日に更新します。


第12回 意図的に指名できる『発表マーク』

◎発表してほしい子に渡す
◎「よろしくね」と一言添える

こんなときに使う! 

 「発表できる人?」と聞いて発表をお願いするのですが、(また同じ子だ……)と、色々な子に発表してもらうことができません。また、発表する子が出てきても(関係のない発言だ……)と、こちらの意図した発表でなく、授業がうまく流れないときがあります。そんなとき、この発表マークが有効です。

こうやって使う!

STEP1 考えをノートに書かせる
 教師が発問をした後に考えをノートに書かせます。発問に対する考えを持たせるためです。発問してすぐに手をあげて発表をさせてしまうと、頭の回転が速い子だけしか考えを持つことができていません。じっくりと考える時間を与えることで、多くの子に考えを持たせることができます。

STEP2 発表させたい子を決める
 机間指導で、子どもがどのような考えを書いたか把握します。すると、いつもは発表しないあの子も素晴らしい考えを持っていたり、ある子とある子の考えが対立していたりすることに気づきます。子どもの発言を把握し、意図的に指名することができるので、授業が組み立てやすくなります。

STEP3 発表マークを渡す
 発表させたい子に発表マークを渡します。発表マークをもらうことで、やる気につながる子がたくさんいます。しかし、中には発表を躊躇する子もいます。そんなときは、「あなたの考えが素晴らしいから、みんなに伝えてくれる?」とお願いします。発表できるように優しく寄り添います。

スキルに込めた願い

子どもの考えがあふれる授業にしたい

挙手指名ではなく、意図的指名

 多くの子が手をあげて発表する授業が、いい授業だとされています。
 確かに、やる気に満ち溢れていて、とても素敵なのですが、全く発言できない子がいたり、関係のない発言ばかり出てしまったりすることが多くの場合に見られます。このように教師が発問し、挙手をさせて指名することを「挙手指名」と言います。挙手指名だと、授業の流れが子ども任せになってしまうので、授業の組み立てが意図したものになりません。
 そこで、教師が発問をしてノートに考えを書かせて指名する子を決める「意図的指名」が大切です。意図的指名だと、教師側の考えで発言させられるので、授業が組み立てやすくなります。千葉県の野口芳宏先生の提唱されているお考えです。

発表マークが自信につながる!

 発表マークを渡すとき、「あなたの考えが素晴らしいから、みんなに伝えてくれる?」と言うと、自分の考えに自信を持たせることができます。発表が苦手な子に対しても、「ノートの考えを読むだけで大丈夫だよ」と、発表のハードルを低くします。すると、発表マークを通して子ども達の自信につながることができます。
 時間はかかりますが、発表マークを通して多くの子に発表を経験させることを繰り返し行うことで、学級全体が発表をする雰囲気になってきます。

意図的指名は難しい

 机間指導をして、発表させる子をノートにメモをします。そしていざ発表させる時、その子を指名するのを忘れてしまったというのはよくあることです。授業をしていると考えることがたくさんあるので、そのようなミスが出てしまうのです。
 そんなミスをなくすためにもこの発表マークは有効です。発表マークを子どもに渡し、「マークが渡された人は立ちましょう」と言うだけで、発表する子が誰か確認することができます。立った子を順番に指名して発表させてもよいでしょう。私の場合、「言える人は手をあげましょう」と声をかけ、自分で発表する決断をさせています。そうすることで、自分の意思で発表することにつなげることができます。

手をあげる発表もさせたい

 とはいえ、子どものやる気を教室に満ち溢れさせるために「挙手指名」もしたいものです。そんなときは、こんな方法はいかがでしょうか?
① ノートに考えを書かせる。
② 「まだノートに考えを書けてない人?」と言い、すべての子に考えを書かせる。
③ 考えが書けていることが確認できたら、「ノートに考えを書けた人?」と手をあげさせる。
④ その中から指名する。
 このやりとりに慣れてきたら、「ノートに考えを書けた人?」から「発表できる人?」に言葉を変えるといいと思います。

全12回ありがとうございました

 「スキル」と聞くと、どうしても子どもをうまく動かすためのものだと考えてしまいます。そうではなく、 スキルを通して子どもの困り感やつまずきに寄り添い、子どもの成長につなげることができます。
 つまり「ちょこっとスキル」は、子どもも教師も成長させてくれるものです。
 全12回に渡り、私の使っている「ちょこっとスキル」を紹介させていただきました。
 みなさん自身の教師人生が素晴らしいものになるために、これらのスキルが少しでも役に立つことができたら嬉しいです。


著 髙橋朋彦
1983年千葉県生まれ。千葉県小学校勤務。2019年「実践!私の教育記録」(日本児童教育振興財団主催)特別賞受賞。『ちょこっとスキル』シリーズ(共著、明治図書)『明日からできる速攻マンガ4年生の学級づくり』(日本標準)「教育サークル スイッチオン」「バラスーシ研究会」「日本学級経営学会」などに所属。算数と学級経営を中心に学んでいる。